仕事をしていて、クオリティに厳しいことはよく理解できる。
ぼくらの場合だったら、分かりやすく言えばミシンのステッチが歪んでいないか、角がしっかり直角になっているか、もしくはカーブがパターン通りか。ポケット付けの位置がずれていないか、ミシンの運針は指示通りかなどなど。出来るだけ指示された通りに作られていたら、クオリティが高いとされる。
しかし、”キレイな商品”という抽象的な基準は難しい。
最近新しくやり始めたとあるブランドは、厳しさの度が過ぎている。 というか、そもそもの基準の観点がずれているとしかぼくは思えない。
そのブランドから生地を支給され、その生地をウチで裁断し縫製加工する。そして出来上がった製品を先方が指示する検品センターに送る。それで仕事が完了。
まず、生地が出来上がる段階で、加工によるシワが入ってしまっているとの事で生地屋さんに3〜4回くらいやり直させていた。ようやく出来上がった生地も、若干シワが入っているらしいが、納得の基準だったからこれで進めて下さいとの事だった。
その後、ウチで裁断、縫製、プレス、ハンガーにかけ、袋を被せて出荷し、その仕事は終了した。終了後、先方の検品センターから、納品した約半数がB品でしたと報告を受けた。
そのB品の内容は、油のようなシミが製品についているとの事だった。そのシミは、ウチの検品の中で十枚ほど見つかったので、専用のスプレーでキレイにしていた。実際にぼくがその作業を行ってるから、あれならば見た目でわからない、キレイと言えるレベルだ。
しかし結果的には数十枚のシミが見受けられたとのことだった。 先方からは、そのシミをもっと早い段階で見つけていたのだったら報告してほしいとのことだったが、早く見つかっていたらもちろん報告している。
問題のそのシミとは、ミシン油が飛んだと思われるモノと、他には人間の手の形がついている、手の油っぽいモノだった。たまーにそういうシミがつく素材は確かにある。機械的に簡単に制御できるものではないから、そうした時ように専用のスプレーが存在する。ミシン油に関しては、専用のスプレーで取ってなんとか出来るものの、手の形っぽいシミに関しては、それが初めからわかってたのなら、縫製ラインの従業員全員に、その商品のときは手袋をして対応するなども必要だったとも思うが、作業している工程の中ではなかなか気づきにくい。でももっと考えたらそもそも手の油っぽいシミなんかが着くような素材が果たして良い素材であり良い商品なのか?
その商品は綿のシャツなんだけど、消費者が購入して着用してする時にも必ず同じようなシミが着くと思う。
シワだのなんだの散々生地屋へ注意して何度もやり直させたわりに、結局手の油がつくなんて、選んだ生地がそもそもおかしいんだって話。クオリティとかうんぬんではなく、もっとそもそもの問題じゃないのか?それでもシミを見つけられなかったウチのせいだとかほざきやがるからたまったもんじゃない。
あと、生地屋さんが何度もやり直しした、ダメと言われてしまった生地がどうなるか考えた事はあるだろうか?あれはもう、ほぼゴミと化す他ない。想像するに、生地って基本的に1反50M巻きで出来ているから、それを3〜4回ってことは150M〜200Mくらいの量になる。
もちろん生地屋は他のメーカーに売ることを考えるだろうけど、それが簡単に売れれば良いが売れなければただの産業廃棄物だ。そういうことさえも考えていない。
これを聞いて、いやいや、言い分は分かるが、そもそも生地屋がまともなシワにならない素材を作らないからいけないんだろ!って思う奴もいると思うが、そんなの机上の空論であり、何も知らないドアホとしか言いようがなく、このブランドの生産担当者と同じ素人レベルに過ぎない。
いくら機械とは言え、人間が扱っている物であり、ましてや天然繊維は特に、その時の気候などにも繊維が反応するって生地屋さんも言っている。100%同じ出来上がりなんてほぼ難しいに決まっている。全てが天然で、純粋な機械じゃないんだから。 ITとかのようにデータの話じゃないんだから、やり直しなんて簡単な訳が無い。
それでもプロだしなんとかしろよ!って言うんだったら、そう思ったお前は救い用のないバカとしか言いようがないな。
100%に近い物をいかに作れるかが勝負なのはわかってる。もちろんそのように日々切磋琢磨して、繰り返し同じような作業をしたり、いろんなハプニングを経て、技術と経験を手に入れている。工場とはひとえにそう言うもんな気がする。
こういうことを理解していない奴は簡単にものごとを喋るから本当に厄介だ。 こんなブランドの仕事はぼくらはもうやらない。お断りだ。
このブランドの仕事は全部で5品番受注していて、1品番目の納品でこれだったから、早々に、今後この5品番以降はウチの会社ではおたくの仕事は受注しませんと伝えておいた。そして続けて2品番を完璧な状態で納品した。残り2品番もさらに凄い完璧なクオリティの製品をガツンと納品してやって、また仕事をお願いしたいって言うのをハッキリと改めてお断りする事で、ギャフンと言わせてやろうと目論んでいる。なめちゃいかんぞ。
コンピューターで作ったみたいな寸分の狂いも無い物をキレイな製品と呼ぶなら、お門違いだな。ぼくはそうじゃ無いと思っている。それがその製品の目的でコンセプトならそれで良いかもしれないが。
そうじゃなくて、細部まで意識を行き渡らせるという、その意識の持ち方こそがキレイを作るとぼくは思う。正確だけが全て正しい訳じゃ無い。出来る最大限の範囲をちょっと超えることを、じっくり続けていく事が、大事なんじゃ無いかって思う。 結局どこまで言っても人は人だからな。摂理ってもんをもっと念頭において考えて貰わなきゃ困るな。
Opmerkingen